2020.05.09
先日のコラムで憲法24条の改正について書きました。
憲法24条1項は以下のように定めています。
「婚姻は,両性の合意のみに基づいて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない。」
同条項の「両性」の解釈が問題となっているということはすでに述べました。
では同条項は婚姻における「両性」に「男性と女性」のみを予定しており,「男性と男性」,「女性と女性」を含まない趣旨なのでしょうか。
そもそも24条1項は前段と後段に分けられ,前段で「婚姻の成立に意思表示の合致以外の要件が不要であること」を規定し,後段で「夫婦が本質的に平等であること」を規定しています。このように分解した上で同条項が制定された時代背景を考えれば,同条項が「両性」と表現した理由が多少理解できると思います。
同条項が制定されたのは戦後すぐの昭和21年ですが,同条項が否定しようとしたものはいわゆる家制度と圧倒的な男尊女卑です。そして家制度を否定した先にあるのが「個人主義」であり,圧倒的な男尊女卑を否定した先にあるのが「両性の本質的な平等」です。
家制度の下では婚姻も自由にできず,戸主の同意が必要とされていました。現在も未成年(現在は20歳未満)の子については少なくとも父母の一方の同意が必要とされています(民法737条1項,2項)が,戦前において父母の同意が必要な年齢は女性で25歳,男性は30歳(!)でした。ここまでくると男性差別にも見えますが,婚姻がいかに制限されていたかがわかるかと思います。このような戦前の家制度を否定するために24条1項前段は婚姻の成立要件を当事者の意思表示の合致のみとしました。
さらに戦前においては婚姻後,妻は(民法上の)無能力者とされて,財産は夫に管理されました。また子の親権も夫のみに帰属しました。このような婚姻後の夫婦間における両性の不平等を否定するために夫婦の本質的平等を規定したと考えることができます。
これらの事実を条項の文言との関係で考えると,24条1項が制定された経緯の1つに「両性の本質的平等」があったことから,条文の定め方として男性と女性を対置し明示することが必要であったということがいえます。つまり憲法は両性の本質的平等を規定するため,技術的に「両性」,「夫婦」の文言を使用する必要があったということです。そうだとすれば憲法は婚姻を男女間に限る趣旨までは含んでいなかったと考えることもできるのではないでしょうか。
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