弁護士ブログ

終戦の日

2023.08.14

 日本国内において8月15日は終戦の日,終戦記念日と呼ばれています。

 1945年8月15日に日本がポツダム宣言受諾及び日本の降伏を玉音放送をもって国民に公表した日であることから,この日を終戦の日とし,毎年この日に追悼行事等を行うことが恒例となっています。

 しかし実際にポツダム宣言に調印した日は1945年9月2日であり,日本以外の国では同日を終戦の日とするようです。

 さらに国際法的なことを言えば,戦争状態が終了したのはサンフランシスコ平和条約が発効した1952年4月28日であることになり,この基準によるとまだ戦争状態が終わっていない国家もあることになりそうです。

 実際,日本は終戦後,戦争がなく平和な国だ,と言われますが,実際にはそんなことはなく,1950年には朝鮮戦争が勃発し,日本も「朝鮮特需」で表現されるように戦争に関与したと評価されています。日本が平和であると言われてきた理由の一つとして,戦争に関係する特需を頼りに経済復興を遂げた負い目のようなものから目をそらすために意識的に戦争が報じられてこなかったということもあったのではないかと思います。

 特需に依存した景気回復はその後,歪な経済成長の道を辿り,30年以上回復することのない不景気に転じたことは誰もが知るところです。そして落ちるところまで落ちきったのか,まだ底は下なのかわからない不安を抱えながら国民は低賃金,高物価,高税率に苦しみ続けています。国民が政府に対して抱く不満は爆発寸前のように思われます。このようなときに支配者が何をするか,歴史上は明らかです。国民の不満を外国に向けようとします。現在,政府が旅行に来る外国人を優遇するのに対して日本に住む外国人を冷遇していることは一つの面といえます。もう一つ,政府は日本が外国から戦争を仕掛けられるであろうことをしきりに喧伝するようになっています。どこの国とは特定せず,脳に刷り込むように小出しに報道させているところが姑息なようにも思われます。このまま政府主導の報道内容を無批判に受け入れていけば,近いうちに日本人の多くは,ある複数の国が日本の領土に攻め込もうとしており,または攻撃を仕掛けようとしており,危険にさらされる,だから日本は牽制できる状態にしなければならないのだ,という思考になるでしょう。この状態になってからでは遅いので,常に批判的に情報と接する必要があると思います。

 これに加えて最近気になることは,戦争の悲惨さを伝える書籍等が排除されたり,終戦の日に戦争について考えさせる番組がなくなったことです。

 書籍等が排除される例としては「はだしのゲン」が図書館から撤去されたり,平和教育の教材から排除されたりしていることが挙げられます。描写が気持ち悪いとの意見がありますが,むしろ戦争の悲惨さを伝えるためには表現を緩めるべきではありません。また誤った歴史認識を植え付けるという意見もありますが,何をもって誤った歴史認識であるのか,公開した上で検討の機会を市民に与えるべきでしょう。また戦後の歴史については研究期間も短く,感情面の対立から正確な情報が得られず議論もできないことが想像され,さらには非公開の外交文書も多いであろうことから,客観的・学問的に定まった「歴史」というものはないと思われます。そういった段階で「誤った」という評価はできないはずで,当時の被害者から見た事実として認識する価値があると思われます。もちろん,異なる意見や認識に触れることを阻害することも許されません。「はだしのゲン」は戦争や核兵器の非道さを学ぶための良い教材であると考えます。広く子供の平和教育に使用されることを望みます。

 終戦の日に戦争について考えさせる番組がなくなったことについては,私が子供の頃には,終戦の日に必ずと行っていいほど「火垂るの墓」が日本テレビで放映されていました。これも内容について色々議論があるようですが,当事者の誰をも美化していない表現は戦争の追体験として価値があるのではないかと思います。

 日本が再び戦争を起こすことがないようにするためには,敗戦時に「二度と戦争をするまい」と誓った国民の気持ちを追体験することが有益であり,「はだしのゲン」や終戦の日に戦争について考えるテレビ番組を見ることがその役割を担っていたことは明らかです。それが排除されようとしている今は,再び戦争をしてもよいのではないかと思わせる方向に動かそうとしている策が講じられているように感じます。そのような方向に向かうべきでないことは繰り返し述べてきました。

 終戦の日には是非とも戦争について考える時間を持ってほしいと願うばかりです。

投稿者:河野邦広法律事務所

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