弁護士ブログ

結婚と姓について(補足)

2019.04.13

 先日の同タイトル記事についてご意見をいただいたので補足します。

 

 ご意見の内容としては、姓の変更の問題は姓を変更する人の社会生活上の不便やそれにともなう苦痛などが主なものであり、婚姻の性質などは当事者にとってあまり問題ではない(重要性が低い)のではないか、というものでした。

 

 確かに姓を変更する方の不便や苦痛は察するに余りあります。ご意見の内容は問題の実態を指摘したものとして正しいものと思います。もっとも、私がブログで書いた婚姻の性質などの内容は、上記ご意見の内容を当然の前提としています。その上で今後、この問題について違憲判決を獲得し、または国会に法改正を促すために必要と思われる理論構成を示したつもりです。

 というのも、従来の夫婦別姓関連訴訟において、姓を変更する当事者の不便等は再三主張されてきました。裁判所はそういった当事者の不便等を前提とした上で夫婦同姓を合憲と判断しているのです。ですので、これ以上、当事者の不便を重ねて主張しても大きな効果が期待できないのではないかと予測されます。そこでこれまでとは異なった角度で主張する必要が出てきます。先日の訴訟において代理人が戸籍法に着目して平等権(憲法14条等)の問題としたことも、従来の主張から構成を変化させたという視点は問題意識が重なります。

 また同様の視点として、2015年判決の意見でも触れられているように、離婚や養子離縁の際における氏の続称(民法767条2項、816条2項)との整合性も今後の検討材料となると予測されます。具体的には、離婚や養子離縁において氏の続称が認められる根拠は、婚姻や長期間の縁組により形成された社会的な認識を離婚や離縁によって失うことの不利益を救済するというものでした。しかし同様の不利益は婚姻においても発生します。すなわち出生時の姓を称することにより形成された社会的な認識を婚姻によって失うことの不利益は発生します。離婚や離縁については救済し、結婚については救済しないことの整合性が今後検討されていくのではないでしょうか。

 

 2015年の最高裁判決においても女性裁判官3名全員を含む5名が違憲と判断していたことから、夫婦同姓制度の理論的根拠は動揺しつつあると言っても過言ではありません。ここからさらに一押しして崩していくためには、やはり制度の根拠を支える婚姻の本質が変化、変質していることを強調する必要があると考えます。

投稿者:河野邦広法律事務所

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