2019.04.06
前回は自分で視点を設定して読んでみる、というものでした。
今回は憲法に登場する人や機関について見てみましょう。漫然と読んだ場合とは違う憲法の構造に気づけるかもしれません。
憲法の条文は1条から103条まであります(ただし100~103条は補則)。試しに第1章から読んでみましょう。
1条には「天皇」と「日本国民」が登場します。予想どおりといえば予想どおりですね。
2条に「国会」、3条に「内閣」が登場します。
5条には「摂政」が規定されていますが、現代において「摂政」が登場する場面は少ないようです。
6条では1項に「内閣総理大臣」、2項に「最高裁判所」、「最高裁判所の長たる裁判官」が登場します。
ここまでで日本を構成する人や主要な機関が登場します。うまくできていると思いませんか?
続いて7条を見てみましょう。3号に「衆議院」、9号には「外国の大使及び公使」が登場します。大使や公使は憲法上に根拠を持つ数少ない役職です。
このように見てみると憲法の第1章に多くの人や機関が規定されていることがわかります。
第2章は9条しかありません。現在議論となっているように、第2章に「自衛隊」が明記されれば、「自衛隊」も憲法に根拠を持つ存在ということになりそうです。
では「自衛隊」とは何でしょうか。この問いは実は簡単なものではありません。「自衛隊」の実質的な定義を正確に言える方はほとんどいないと思います。どこに規定されているかもわからないという方が多いのではないでしょうか。ネットレベルでもいいので調べて考えてみると現在の改憲議論についての理解も深まるかもしれません。
第3章は人権についての規定なので、いったん飛ばします。
国を構成する機関についてまとめて見るためには第4章以降を見ることになります。
例えば皆さんご存じの「国会・内閣・裁判所」といった機関です。「三権分立」という言葉を学校で習った記憶があるのではないでしょうか。国会は41条など、内閣は65条など、裁判所は76条1項などに登場します。
これ以外に、どのような機関が定められているのでしょうか。
三権から考えると、国会を構成する衆議院と参議院が定められています。内閣については内閣総理大臣と国務大臣が定められています。裁判所については最高裁判所と下級裁判所が定められています。
三権以外で何かないかと探してみると、「会計検査院」(90条)という機関があります。最近、ある問題でその判断が話題になりましたね。会計検査院は決算を検査する機関であり、三権から独立した機関です。憲法に直接の根拠を持つ数少ない機関です。
では、我らが弁護士は憲法上に根拠を持つのでしょうか。
弁護士が主に属する司法の領域については前述の裁判所が規定され、76条3項に裁判官も定められています。そして最高裁判所の規則制定権の規定(77条1項)の中に「弁護士」とあります。「検察官」(77条2項)も最高裁判所規則に従うという形で規定されています。しかし、同規定は最高裁判所が規則を定めることができ、司法関係者はそれに従う義務があるという程度の意味しかありません。それではあまりに寂しいです。
そこで他に弁護士について規定していないか探すことにします。
少し戻ると、ありました。
「弁護人」(34条、37条3項)。
「弁護『士』」ではなく「弁護『人』」になっていますね。刑事弁護を担う場合、弁護士の呼称は「弁護人」になります。肝心の規定のしかたは「弁護人を依頼する権利」、「弁護人の出席する公開の法廷」(34条)、「弁護人を依頼することができる」(37条3項)というように刑事手続に必要な存在として積極的に規定されています。これで胸を張って、憲法に根拠を持つ職業であると言うことができますね。
このように弁護士は憲法上に根拠を持つ数少ない職業であり、公務員でない職業として憲法上の根拠を持つ唯一の職業です。やはり弁護士は憲法を大切にしないといけないと思う今日この頃です。
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