弁護士ブログ

医学部入試問題

2019.03.23

 平成31年3月22日、東京医科大学の過去の医学科入試において不正が行われていた件で、元受験生の方々が同大学を被告として損害賠償を求めて東京地裁に提訴した報道がありました。

 この問題が大きく採り上げられたのは平成30年の7月から8月でした。当時、私が入院していたこともあり、興味を持って報道を拝見していました。東京女子医大の「創立者の想い」を読んだりもしました。この問題については様々な識者の意見が述べられており、私もこれらの意見のいずれか、部分的に同意ということで、特に改めて述べることはありません。敢えて角度を変えて述べるとしたら、女子の進学、就業については過去に比べれば進歩したものの、未だ進歩の途上にあることを忘れてはなりません。そして変化により新たな歪みが不可避的に発生するのであり、その歪みから目を背けてはいけません。問題の解決のために現在苦しんでいる人や、これから進学等に臨む人の意見を聞くことも大事ですが、問題の本質を理解するためには、過去に進学を希望することすら認められなかった世代の方々、特に進学できなかった方々の話を聞くことが必要だと思います。現在メディアで発言できる方々は、進学できた方がほとんどです。医学部入試問題もそうですが、進学できなかった方々の声の方が問題の本質を理解しやすいともいえるのであり、このような方々の声をメディアその他、様々な方面で発信し、耳を傾ける必要があります。

 話を戻しますと、医学部入試についてはこの問題以外にもたくさんの問題があると思います。

 まず私大の医学部に入学し、卒業するためには6年間で数千万円の学費が必要です。私が知人等の医師から聞いた私大医学部の学生生活の状況から計算すると、学費以外の生活費や交際費も相当の金額になるはずです。入学前の受験についても子どもの頃から塾やら予備校やらに相当の費用が投じられていることも想像に難くありません。このような費用がかかるのでは相当裕福な家庭に生まれない限り、私立の医学部を志望することはできません。この点については「国立に進学すればよい」という意見もあるでしょう。この反論についてはある程度理解できます。しかし、医学部入学がほぼ医師になることと同義の制度において、その入口で貧富の差があからさまに反映されることに不安や不公平を感じます。例えば受験生の選択肢が不当に狭められる可能性を無視してはいけません。というのも医学部は大学の偏差値に関係なく、ある分野において優れた研究を行っている大学が多数存在し、これは国立、私立関係ありません。そのため、ある分野を研究したいと思った裕福でないが優秀な受験生がいた場合に、その分野について優れた成果を上げている大学が私大であるということはあり得ます。この場合に親の財力で選別してしまうと、このような優秀な受験生の進路は不当に狭められてしまいます。これは研究成果の話に限らず、「医師としての精神」などについてもあてはまります。このような観点から、どうしても「その私大」に入学したい受験生も存在するのです。したがって「お金がないなら、国立に行けばよい」ということにはなりません。

 また今回の医学部入試問題でも明らかになったように、医療の現場は多様な能力により成り立っています。この多様な能力とそれが秘める可能性を親の財力という篩で落としてしまうことは妥当でしょうか。

 私は医学部について、ある程度、財力に関係ない選択ができるようになるべきであると考えます。そしてそのような制度が整備されることを願っています。

 

 もう一つ、私が相当以前から思っていたことがあります。

 それは、埼玉県に国立の医学部を設置してほしいということです。

 確かに埼玉県には防衛医科大学が存在します。しかし防衛医科大学は卒業後の進路に制限がある(と聞きます)など、特殊な大学といえます。他の国立大学と同様に、大学を卒業後、その地域に定着しやすくするような制度設計が可能な医学部が埼玉県にも存在しなければ、他の都道府県と平等ではないと思うのです。

 また現実的な問題として、最近、埼玉県に医師が不足していると聞きます。特に小児科医が少ないのではないかと聞いています。この現象が国立大学医学部の存否と関係するか否かは明らかではありませんが、整合はしています。

 一刻も早く、埼玉県に国立大学の医学部を設置してほしいと願います。

 

 この他にも医学部入試に関して外部から見て感じられる問題点は書き切れないほどあります。また、医師の過酷な労働環境など、医療の現場についても問題は山積みでしょう。医学部入試が医師になることとほぼ同義の制度において両者の問題は一体となって検討されるべきであると思います。

投稿者:河野邦広法律事務所

まずはお気軽にお電話を

ご自身では解決できないお悩みがございましたらさいたま市浦和区にある河野邦広法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。

pagetop