弁護士ブログ

憲法を楽しく読んでみる(1)。

2019.03.16

 日本の教育で初めて憲法について学ぶのは中学の社会の時間でしょうか。私も中学の頃に憲法前文を全て覚えた記憶があります。司法試験の口述試験では憲法前文どころか、全ての条文を暗唱できるようにしました。ところが本番で条文の文言を聞かれたのは憲法25条1項だけでした。これも良い思い出です。

 法学部に入学したり、資格試験や公務員試験を受験するといったきっかけがなければ、一般の方は憲法の前文や条文を読むことは少ないと思います。実際、興味が無い方が読んでも面白いとは感じないかも知れません。しかし、憲法をよく読むと興味深いこと、考えさせられること、制定に携わった方々の情熱などを感じることができます。特に前文の宣言は力が込められていて大変かっこいいと思います。

 本当は面白くてかっこいい憲法をもっと多くの人に読んで欲しいと思っている弁護士は多いと思います。私もそう思います。特に個が全体のために存在するかのような風潮が強まってきているように感じる昨今、個人が大切であることを教えてくれる憲法は読む人に勇気を与えてくれるのではないかとさえ思います。

 とはいえ、頭から読んでも眠くなる、ということで、気軽に面白がって読む方法を考えてみたいと思います。

 憲法について学校で教えられることをキーワードで表現すると、「人権・民主・平和」、「教育・勤労・納税」、「司法・立法・行政」といったところが有名でしょうか。いずれも3つで成り立っていますね。

 憲法の3大〇〇を考えることも面白いかもしれません。

 例えば憲法は権利や義務について定める他に、多くのことを「禁止」しています。そこで「憲法の3大禁止」を考えてみるのはどうでしょう。司法試験受験生ですと、「検閲」(21条2項前段)が浮かぶかもしれません。前回のブログで触れた児童酷使の禁止(27条3項)もあります。

 真面目に頭から読んでいくと、9条は戦争や戦力の保持を禁止していると考えることができそうです。12条には「国民は、これ(自由及び権利)を濫用してはならない」とあります。14条2項は貴族制度を禁止しています。15条4項前段は投票の秘密の侵害を禁止しています。18条は奴隷的拘束などを禁止しているといえます。また精神的自由と呼ばれる19条から21条には、やはり何かしらの「禁止」が含まれています。このように見ると、たくさんの「禁止」が出てきます。

 そのような中で、憲法が「絶対に」禁止していることがあります。

 それは36条です。同条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と規定しています。同条は死刑廃止論にも関係します。「絶対」の文言に強い決意を感じることができますね。仮に順位をつけるとしたら、36条の順位は高そうです。

 そして36条を含む31条から39条は主に刑事手続について規定しており、禁止の連続です。このことから憲法は刑事手続において国民の人権が侵害されないことを重視しているといえます。ちなみに34条に「弁護人」がでてきますので、憲法との関係で弁護人が負う責任は大きそうです。(この点はよく誤解されたり、質問を受けるところなので、また今度お話ししたいと思います。)

 このように「禁止」の視点で憲法を読んでみると、憲法がむしろ「禁止」で成り立っているとさえ思えるのではないでしょうか。そして矛盾するようですが、憲法の3大禁止を決めることが憚られるくらい、大切なことが「禁止」によって守られていると思えるのではないでしょうか。

 最終的に憲法の3大〇〇を決められなくても、こういった視点を設定して拾い読みするだけでも色々なことを感じ取ることができること、楽しく憲法を読めることが少しでも伝われば幸いです。

投稿者:河野邦広法律事務所

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