弁護士ブログ

世界に映る日本の姿

2021.07.23

 オリンピックの開会式の直前にディレクター等が次々に辞任,解任となる事件があったことは昨日の記事に書きました。この記事を書いている現在,まだ開会式前なのですが,報道によると小林氏が携わった開会式の演出はそのまま行われるようです。ネット上の一部記事では,小林氏が携わった開会式の演出を実行したら日本の国際的地位も危うくなるというものもありました。そのような指摘もある中で強行するのですから,組織委員,政府は責任を取るつもりで決断したのだろうと思います。

 個人的には,前記の経緯もある上,開会式のパフォーマンス自体,多くの人が密集するので緊急事態宣言との整合性の視点からも取りやめた方がいいのではないかと思っています。

 他方で日本国民としては,今回の組織委員会や政府の責任を追及することは当然として,別途,このようなことが起こってしまった原因を分析して世界標準の人権意識から後れを取っている現状を改善する方法を考える必要があります。

 今回,特に小山田氏と小林氏については20年前の言動について問題視されたことが共通しています。この点について「昔(のサブカルチャー界隈)は,今回問題視されるような言動を受け入れていた。」との意見もありますが,当事者らからすると冗談じゃない,といいたいところでしょう。ただその反面,今回問題視されるような言動が20年以上,ネットの一部で騒がれたことを超えて問題視されなかったことは日本の根本的な失敗であったのではないかと思います。特に小山田氏の言動については騒いでいる人がいるにもかかわらず真剣に議論されることがありませんでした。この点については関連団体の方が共同教育のあり方と合わせて問題提起をされているのを見かけたので,単なる個人攻撃ではない,問題提起・解決の参考になるかと思います。

 これに対して小林氏の件に関しては,ビデオとして編集せずに販売されたことを考えると,リハーサル,実演,ビデオ編集,販売のいずれの段階においても問題視されなかったことがうかがわれます。識者によれば日本の国際的地位を脅かすことになりかねない問題について誰ひとりとして問題視しなかった事実に我々は恐怖を感じなければならないのではないでしょうか。日本の人権意識はそれほどに低いレベルでとどまっているということです。

 今回の問題も,オリンピックという国際的行事がなかったらスルーされていたと思います。かように日本と世界の人権意識に差が生まれたのはなぜでしょうか。1つの原因として考えられるのは戦争観の違いであると思います。第二次世界大戦において日本(大日本帝国)はドイツ,イタリアと同盟関係にありました。そのため国際的には日本はナチスドイツと同盟関係にあった国家,というイメージをもたれているはずです。少なくとも学生の歴史の授業ではそのように教えるはずです。これに対して日本では第二次世界大戦についてあまり深く掘り下げて教育していないように思われます。そういった教育の差から生じる国家イメージのズレが日本国民の国際的な人権観とのギャップを生む可能性は否定できないのではないでしょうか。日本の教育はこの点を改善しなければならないでしょう。

 そして日本としては今一度,第二次世界大戦における自国の立場,行動と向き合う必要があると思います。これは決して欧米との関係だけではなく,アジアの国々に対する諸政策,行動,また当時の日本国民に対する扱いについても向き合わなければなりません。敗戦後,国家が存続していることを当たり前のように考えてしまっている現代の我々には,戦争当事者でなくとも戒めとしての反省が必要であると思います。

 もうすぐ原爆の日と終戦記念日になります。こういった事件があったことを機会として平和について,戦争について考えるべきだと痛感しました。

投稿者:河野邦広法律事務所

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