弁護士ブログ

新型コロナウイルス

2020.03.27

 世間は今,新型コロナウイルスの拡大に戦々恐々としています。

 オンタイムでこれを読んだ方にとっては,これから書くことが当たり前のこととして映るかもしれません。しかし今起こっていることは何年後かには忘れ去られているかもしれません。新型コロナウイルスについては忘れなくても,この時,国で行われた政策や国会でのやりとりが,ねじ曲げられたり改ざんされるかもしれません。最近の日本の政治を見ていて,そのような懸念を抱いたため,感じたことを書いておこうと考えました。

 中国の武漢で新型コロナウイルスの感染が拡大している情報が入った当初,日本は基本的には感染防止策を採りませんでした。むしろ中国からの旅行者を「お待ちしています。」という姿勢でした。(この方針の是非を論じることはしません。ただ,事実としてそうであったことを書き留めたいと思いました。)

 日本に停泊したダイヤモンドプリンセス号内の感染者については船内にとどめる方針を採りました。

 その後,中国だけでなく欧州等でも感染が拡大していることがわかっても,日本は原則として37.5℃の体温が4日間続くことなどを条件として相談後に検査をするなど,検査数を絞り込む方針を採りました。

 また政府は令和2年3月2日から全国の小中高校に一斉休校を要請し,ほとんどの学校が休校に入りました。卒業式は卒業生徒のみで行われたり,卒業式自体が行われない学校もありました。防衛大学校の卒業式は行われました。卒業生の間隔は空けられておらず,卒業生らが大きな声を上げる様子が報道されました。

 なおも欧州,米国等の感染拡大が収束せず,株価の暴落を経て,令和2年3月24日,東京オリンピックの延期が発表されました。

 意図的か偶然かはわかりませんが,東京オリンピックの延期が発表されたとたんに東京の1日あたりの感染者数が倍以上に増加しました。

 東京都は平日の自宅勤務,休日の外出自粛を要請しました。これと時を同じくして首相夫人が桜の木の前で芸能人らと撮った写真が週刊誌に掲載されました。写真の真贋等がわからないので,この点の評価は置いておきますが,この報道について首相は国会で「レストランに行ってはいけないのか」と答弁したと報じられています。これを言ってはいけなかったのではないでしょうか。国民は外出自粛を要請されているのです。レストランに行くことも外出です。レストランに行って構わなかったのであれば,外出自粛要請とは何だったのでしょうか。今回の外出自粛要請によって店じまいをすることになった飲食店に何と説明するのでしょうか。「『自粛要請』しただけで『禁止』はしていない。外食しても良いのにしなかったのは国民の判断だ。」とでも言うのでしょうか。首相の当該答弁はあまりに無責任です。

 思えば新型コロナウイルスをめぐる政府の対応は最初から後手にまわり,かつ,ちぐはぐでした。経緯は上記のとおりなのですが,報道されている個別の政策についてもちぐはぐです。

 例えば当初は「現金給付」と言っていたのに,急に「和牛」や「旅行代金」という話が出てきてしまいました。これに続いて「魚介類」,「高速料金値下げ」といった話が出てきて,子どもが会議をしているような印象を受けました。そうかと思えば再び「収入要件ありの現金給付」という話が出てきました。仮にこの政策が実現した場合,要件検討の役を担うことになる自治体は大変でしょう。事務費も高くつきそうです。また政府は収入が減少した世帯を救済するための政策に軸足を置いているのか,景気対策,経済の下支えとして政策を打つのかがはっきりしていません。

 また外出自粛についてもちぐはぐ感が否めません。令和2年3月2日からの一斉休校がそもそも唐突でしたが,首相は「卒業式を実施してほしい」とも述べました。さきほどの「レストランに行ってはいけないのか」と同じパターンです。首相は卒業式シーズンが終わる前から実施してほしいと言っていたと主張しているようですが,そうであるとして学校にそれが伝わっていたのでしょうか。そして令和2年3月20日には休校要請を新学期から解除すると発表されました。しかしこの方針はちぐはぐになってしまいました。令和2年3月下旬において,国民は外出自粛を要請されており,東京近郊から東京都への移動についても自粛要請が出ています。そして自粛の期間は「21日程度」と報道されています。とすると,外出自粛,東京都への移動自粛は令和2年4月中旬まで続く可能性が高いといえます。新学期が始まるのは4月上旬です。これでは子どもが登校して,親は外出自粛という状態になりかねません。もちろん今後,4月上旬に外出・移動自粛要請が解かれる可能性もあります。または1学期の開始時期を4月中下旬にする可能性もありますし,休校要請解除の撤回もあり得ます。しかし現状を見ていると,上記のような矛盾した政策が罷り通ってしまうのではないかという恐怖心を抱かざるを得ません。このようなとき,最近の日本国民は何とか理屈を付けて政策の平仄を合わせる努力をしてきたように見受けられます。特にインターネットに書き込みをする方の中には,政策担当者なのではないかと思うような詳しさで平仄を合わせている方も見受けられます。しかし,現在のような緊急事態においてそのような努力は有害無益です。国民はもっと政権に要求して良いし,文句も言って良いのです。むしろ文句を言うべきです。

 前のブログでも述べたように,現在の政権与党は桜を見る会の問題と検察官の定年延長問題辺りから急激におかしくなりました。以前からおかしくなっていたかもしれませんが,この2点については節度を超えています。

 何年後かにこの内容がどのような思いで読まれるか,楽しみでもあり,恐怖でもあります。

投稿者:河野邦広法律事務所

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