弁護士ブログ

宣言する者とそれを聞く者(1)

2020.04.07

 本日,首相が緊急事態を宣言しました。

 対象は東京,神奈川,埼玉,千葉,大阪,兵庫,福岡の7都府県です。

 これにより今後は上記7都府県の住民には外出自粛等が強く要請されることになるそうです。

 ここでよく考えると「自粛を強く要請する」ということの意味がわかりません。これはつまり強制されているのではないかと思ってしまいます。しかし特措法には罰則等がないから強制ではないのだそうです。日本,特に現政権はこのようなロジックを繰り返し使用しています。以前も述べましたが,日本国民はこのような理不尽な事態に遭遇しても賢く立ち回ってしまうため,為政者に深刻に受け止められてこなかったように思われます。「賢く」と書くと良い意味に聞こえてしまいますが,悪く言えば「ダイナミズムに欠ける。」「主権の行使を逡巡している。」ということです。もっと厳しい言い方をすれば「主権者として未熟」ということかもしれません。もちろん,これは私にも当てはまります。成熟するためには何十年,何百年を要するかもしれません。世界史と日本史を並行して学ぶとよくわかりますが,日本は欧州と比較して民主政治の歴史が浅く,非常に大きく差をつけられているといっても過言ではありません。欧州では紀元前から民主制が行われているのであり,その差を埋めるには相当の時間と努力が必要になります。

 話を今回の宣言に基づく要請等に移すと,前に述べた「ちぐはぐ感」は続くようです。外出,移動を制限(自粛要請ですが,敢えてこのように書きます。)するのに,公共交通機関は動いています。「埼玉県民は東京都に入らないように」と要請しながら,高崎線も京浜東北線も,埼京線も通常運転です。また事業者に休業を要請しますが,補償の有無や範囲は明確に言いません。「補償するから休業しなさい」と命令された方がまだましかもしれません。この点については国と都で休業を要請する業種に食い違いがあり,都が実施するという4月11日までに間に合うのか,疑問です。また国と都ですり合わせをしていないことが明らかになり,国民を不安にさせる結果となったように思いました。そもそも知事に権限が付与されるとすると,国は都に対してどこまで干渉できるのでしょうか。議論が尽くされているのかも疑問です。そもそも対象地域の自治体の知事に付与される権限についても認識の食い違いがあったら,と考えると恐ろしいです。

 私がもう一つ心配なのは,学校の休校についてです。前記7都府県の学校の開始は早くても5月7日です。これに対して他の自治体については休校しないところもあるでしょう。その場合に生徒間に学習の進度に大きな差が出ます。大人にとってはたかが1か月かもしれませんが,3年間しかない中学,高校生にとっては非常に大きい遅れになります。特に3年生にとっては受験を控えた1年間であり,影響が出ることは必至です。これは浪人生にも当てはまります。さきほど「受験を控えた1年間」と書きましたが,大学受験については1次試験が1月にあるので,受験まで9か月しかないのです。しかも1次試験の実施についても混乱しているため,今年の高校3年生は本当に不幸だと思います。早めに方針を明確に定めなければ努力が水の泡,ということになりかねません。一部の受験生については人生がかかっていると言っても過言ではないので,文部科学省を中心に早急に明確な方針が打ち出されることが望まれます。

投稿者:河野邦広法律事務所

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