2019.08.13
では,弁護士はなぜ悪い人を弁護するのでしょうか。
もう理解されている方もいらっしゃるかと思いますが,弁護士は憲法に基づく職業であり,憲法により国家機関から国民を守る役割を与えられました。そして守るべき「国民」に有罪・無罪の区別はなく,刑事手続の当事者となった国民は全て弁護士によって国家権力から守られる権利があるのです。弁護士はその権利を実現する存在です。だから弁護士は「悪い人」も弁護します。
そのように憲法で決められても納得がいかないという方もいらっしゃるかと思います。そのような方にわかっていただくにはどうしたらよいでしょう。おそらく納得がいかない方には,あまり知られていない弁護士の仕事について説明をする必要があるかもしれません。
【弁護士の仕事① 逮捕・勾留や起訴を阻止する】普通に生活していると気がつきませんが,起訴するまでもない軽微な「犯罪」をしてしまっている方は結構います。大げさかも知れませんが,例えば,あなたが国家にとって不都合な発言・行動をし,または不都合な思想を持っているとみなされて,軽微な犯罪で逮捕,起訴されるということはあり得ます。戦前には実際にそのようなことが行われ,拷問が行われたのです。現在では戦前のような拷問はないとしても,逮捕・起訴されただけで社会的に大きな不利益を被ります。
弁護人は逮捕・勾留が不当ではないかをチェックして,不当であれば検察官に意見を述べ,準抗告を申し立てるなどして釈放させます。また起訴が不当と考えれば,検察官に意見を述べて嫌疑不十分による不起訴や起訴猶予といった処分にさせることも多いです。世間的には無罪判決はセンセーショナルに報じられますが,不起訴処分が大きく採り上げられることや,まして不起訴処分のために奔走した弁護士が讃えられることはほとんどありません。
弁護士は逮捕・勾留または起訴されないようにする仕事をしているのです。
(つづく)
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