弁護士ブログ

物事の順序(1)

2020.02.27

「物事には順序がある」

 

 よく耳にする言葉です。親に言われた気もしますし,学校で言われた気もします。同じようなことを会社で言われた気もします。私の場合,弁護士になってからも言われたかもしれません。

 このように何回も言われる言葉ですが,何回も言われるのには理由があります。言われる私たちが物事の順序を守れていないのです。守れていないから何度も言われるわけです。

 人は物事に順序があることをわかっていながら順序立てて処理できないのです。

 またわかっていてもわざと物事の順序を守らないこともあります。

 最近の報道を見ていて,社会が物事の順序を守らない事案が散見されます。

 

1つ目はコロナウィルスの検査に関する報道です。

 報道によりますと,ダイヤモンド・プリンセス号の船内で作業に当たった職員についてウイルスの検査を行わなかったとのことです。驚くのはその理由で,「陽性者が多く出た場合に業務に影響するから」と報道されています。陽性者がいた場合,その職員を隔離せず,情報共有もしなければ他の職員が防御できず,感染が拡大します。感染が拡大したら,業務への影響は甚大になるでしょう。そんなことは簡単に想像できそうですが,それでも感染が拡大しない方向に賭けたということなのでしょうか。本末転倒も甚だしいといえます。

 

2つ目は検察官の定年延長問題です。

 そもそも検察官の定年年齢は,検察庁法22条で定められており,検事総長を除く検察官は63歳,検事総長は65歳です。内閣は63歳と定められている検察官の定年年齢について,国家公務員法81条の3を適用して延長するとしました。この点について解釈変更の可否・是非の問題のように論じられていますが,そもそも解釈レベルの問題以前に適用はできないように思われます。そのことは置いておくとして,内閣はなぜこの期に及んでこのような方法を採ったのでしょうか。一般論として検察官に定年延長が必要な事態があると認識していたのであれば法改正の方法を採るべきであり,解釈変更とする今回の方法は場当たり的に感じます。百歩譲って,カルロス・ゴーン氏の件が影響しているとして,解釈変更の方法を採るとしても,無理筋であると思います。そもそも内閣の主張によると,解釈変更前の検事総長候補の方では「公務の運営に著しい支障が生ずる」ということでなければなりません。そんな事態があり得るのでしょうか。この点についても説明が不足していると思われます。いずれにしろ本件の混乱は法改正によるべき順序を誤ったことにより生じたといえます。法改正が間に合わないなら順番通りの人事にすれば良いだけの話なのです。

 

3つ目は野党に対する批判についてです。

 主にインターネットにおいて,野党が「桜を見る会」や前記「検察官定年延長問題」について質問するからコロナウイルスの議論ができない,といった批判が見受けられます。しかしこの批判も順番を誤っていると言わざるを得ません。

 そもそも野党は少数派の立場から政権与党の政策を批判的に検討するのが責務です。政権与党は野党からの追及を受けるような隙を見せないように運営しなければなりません。「桜を見る会」についていえば資料を出して検討させて,問題がなければ年内に話はついていたはずです。また検察官定年延長問題については内閣発信の問題であり明らかに不当な方法を採っているので,与党を含む国会はこれを見過ごしてはなりません。そのように考えてみると,国民生活にほとんど影響がなく,規定通りで十分な検察官人事を敢えて捻じ曲げて論点を発生させ,コロナウイルスについての審議の時間を浪費させた内閣にこそ問題があるといえそうです。これも優先順位という意味で順序を間違えたということになると思います。

 このように現在の政権与党はこれまでに考えられなかったようなレベルで物事の順序を誤っているように見受けられます。コロナウイルスの問題についてもオリンピック開催が危ぶまれるというレベルで論じる方が見受けられますが,これも順序が誤っています。そのような問題ではなく,国民の生命がかかった問題として論じる必要があるでしょう。

 物事の順序の大切さが身に沁みる今日この頃です。

投稿者:河野邦広法律事務所

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