弁護士ブログ

Twitter考

2019.10.05

 近頃のSNSの発展,拡散はめざましく,FaceBookやTwitter等が広く利用されています。特にTwitterは芸能人や政治家が仕事に関することまでつぶやくようになっているようです。私はTwitterがここまで普及するとは思っていませんでした。そもそもTwitterの収益構造は明らかでなく,限られた広告枠の収入があるにしても,あれだけの場を提供するには費用がかかりすぎます。ですから早期に有料になるのだろうと思っていたのですが,そうではないようです。

 Twitterの普及はこれまで社会に対して発言する機会がなかった一般市民に発言や表現の場を与えたという意味で,表現の自由(憲法21条1項)の充実に一役買ったと言っても過言ではないでしょう。

 その反面,気軽に発信できてしまうことの弊害も多く現れています。例えば,Twitterの投稿が激増した時期以降,私は一人で外食をすることがほとんどなくなりました。最初のきっかけは飲食店内で若者がカウンターにおいてある調味料を鼻の穴に入れたり,直接口をつける動画がニュースで放映された時です。そのような者がいるであろうことは想像していましたが,いざ目の当たりにしてしまうと,カウンター上の調味料を使う気が失せてしまいました。それでも外食はしていたのですが,今度は厨房の従業員が食材を粗末に扱ったり,不衛生な行動を採る動画がニュースで放映されました。こうなってしまうと外食をする気が失せてしまいます。現在私は一人で外食するならば厨房が見渡せるような所くらいしか行きません。それくらい投稿動画から受けたショックは大きかったのです。

 このようにTwitterをきっかけに外食をしなくなった方は多いのではないでしょうか。Twitterの普及と飲食店の売り上げを調べればと負の相関関係が認められると思います。

 なぜ人は不特定多数の人間に向けて発信することができるようになると軽率かつ大胆になってしまうのでしょうか。きっと投稿者は投稿するまでは善良な市民であった可能性が高いと思います。そういった方がいざ発信するとなると社会規範を逸脱してしまうのです。

 思春期に好きな子の前で必要以上に張り切ってしまう子とは違うように思われます。そもそも不特定多数の人間に好かれたいわけではありませんし,むしろすさまじい非難を受ける可能性の方が高いのです。それでも高揚してしまうところにTwitterを含むSNSの怖さがあります。

 こういった,いわば「偽悪」を助長するのがTwitterの性質であるとするならば,正反対の「偽善」を加速するのもTwitterの性質かもしれません。Twitterには真の正義感から筋の通った主張する方もいれば,表面的で空疎な言葉も多く感じられます。そもそもTwitterは不特定多数の人々に,匿名に近い形で「つぶやく」ことができるのが特徴であったにもかかわらず,多くの方がテレビのインタビューに答えるようにかしこまっています。確かに無難なことを述べていた方が炎上は避けられますが,無難なことを述べるためにTwitterを利用する意味もわかりません。結局,炎上を恐れれば「偽善」に近づき,恐れなければ「偽悪」に近づくという振り子のような構造に陥っているのかもしれません。面白いのは「無難」が振り子の端であり,真ん中ではない,ということです。Twitterの振り子の中心は結局「本音」をつぶやくことに行き着くことになります。

 このように考えるとTwitterは中途半端に利用する者を「偽善」と「偽悪」に振り分ける装置のように思われます。

 こういった特性を利用者が自覚して,Twitterが健全な方向で発展してもらえればと思います。

 それにしてもTwitterの収益構造は謎ですね。

投稿者:河野邦広法律事務所

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